研究概要 |
安定化ジルコニアなどの固体電解質を用いる固体酸化物燃料電池は、原理的に総合変換効率が最も高い。また、メタンなどの炭化水素系燃料を高度に精製することなく使用できる。しかし、現在開発中のものは約1000℃という高温運転のため、材料の劣化が避けられず材料選択も制限される。もし、800℃程度の低温作動が可能となれば、これらの問題も解決され実用化に拍車がかかる。 本研究は、炭化水素系燃料ガス用高性能アノードを開発し、低温作動SOFCの実現に貢献することを目的とする。15,16年度に、以下の研究成果を得た。 1.電子-イオン混合導電性サマリアドープセリア(CeO_2)_<0.8>(SmO_<1.5>)_<0.2>(SDC)微粒子の焼結多孔体上に微量のNi触媒を担持したアノードの微細構造と性能の関係を解析した。その結果、粒径約20nmのNi超微粒子がSDC表面に高分散されているため、従来のサーメット電極の約1/8以下のNi使用量で、有効反応面積が十分に確保できていることがわかった。また、加湿水素燃料中、800℃、0.6A/cm^2で、1100時間安定に連続運転できた。この電極微細構造の安定化に関する全く新しい作用機構を明らかにできた。 2.上記の構造のセルに加湿メタンを燃料として供給し発電特性を調べた。メタンの完全な水蒸気改質に必要なS/C(水蒸気/炭素)比は2であるが、S/C=1という低加湿条件でも放電によって生成した水蒸気を利用して改質が進行するため発電が可能であった。ただし、わずかに炭素析出が起こり、経時劣化が見られた。Ni触媒に替えてNi-Co触媒を用いても炭素析出はあまり抑制できなかった。触媒量を増加させること、あるいは触媒金属種を替えることにより、水蒸気改質の比率を向上させて炭素析出を抑制できる可能性を見出した。 3.上記の構造のセルに水蒸気を供給し、直流を通電することで、純水素を高効率に製造できることを見出した。
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