研究課題/領域番号 |
15360366
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
南埜 宜俊 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30116107)
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研究分担者 |
小泉 雄一郎 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (10322174)
辻 伸泰 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (30263213)
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キーワード | ARB法 / 強加工材 / 圧延 / 内部摩擦 / 防振特性 / 超微細結晶粒 / 1100合金 / 転位 |
研究概要 |
平成15年度に交付通知後、装置等を購入し、研究を実施した。本研究では、工業用純アルミニウム(1100合金)に2段圧延機を用いて、繰り返し重ね接合圧延(ARB)法により相当圧下ひずみ(E_d)を最大4.8までの強加工を試料に加えた。内部摩擦測定用試料は、加工材の圧延方向が試料の長手方向に平行になるよう板厚1mm×板幅5mm×長さ60mmのサイズの小板を切り出し、内部摩擦測定を行った。さらに、強加工材の縦断面に対して透過型電子顕微鏡(TEM)による組織観察も行った。1100合金強加工材の内部摩擦のε依存性は、全てのεでE_d=0材が最も低い内部摩擦を示し、E_dが増加するに従って内部摩擦は増加する傾向を示した。E_d=4.0材において、ε=1.8×10^<-2>で内部摩擦がQ^<-1>=6.6×10^<-3>と最も高い値を示した。さらに、全ての強加工材に共通してε≒1.0×10^<-3>以下では、εが増加するに従って内部摩擦は増加するが、それ以降の高ε側で内部摩擦はほぼ一定値を示した。E_d=0.8材のTEM組織は転位セルもしくは不定形なサブグレインで構成された組織を示し、それらの転位セルまたはサブグレインのd_tは0.48μmであった。転位セル内部では不純物にピン止めされている転位が観察された。E_d=4.0材のTEM組織は圧延方向に伸長しこれらの伸長粒のd_tは0.25μmと非常に微細化さていた。転位は圧延方向に対して垂直方向にバウンダリーからバウンダリーまで横断し、不純物によるピン止め間隔が約20nmから30nmで、転位が細かく波打って存在していた。E_d=4.0材の転位密度はE_d=0.8材のものに比べて高くなっており、転位と不純物との相互作用がより活発になり、E_dの増加に伴い内部摩擦は上昇したと考えられる。特に高E_d材において、ひずみ振幅ε=1.8〜5.4×10^<-4>辺りで、転位の全ての不純物からのピン止め解消が起きていることが、明確に現れている。さらにE_d=2.4〜4.8材で、ε=5.4×10^<-4>より高ひずみ振幅側で、内部摩擦が一定値を示したのは、転位がセル内の不純物からのピン止めから完全に離脱し、ピン止めがバウンダリーの強い固着点のみとなり、より大きなひずみ振幅に対しても転位の可動面積が最大値に達したため、内部摩擦の一定になったと考えられる。E_dが増加するに伴い、一定値となった内部摩擦が高い値を示したのは、転位セル内(粒内)に蓄積された転位密度が上昇しているからであり、可動転位の増加によるものである。
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