研究課題/領域番号 |
15360366
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
南埜 宜俊 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30116107)
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研究分担者 |
辻 伸泰 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (30263213)
小泉 雄一郎 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (10322174)
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キーワード | ARB法 / 内部摩擦 / 制振特性 / 転位 / 超微細結晶粒 / 磁壁 / 焼鈍 / 再結晶 |
研究概要 |
強磁性型制振材料の制振性と強度におよぼす結晶粒超微細化の影響を明らかにすべく、代表的な強磁性型制振材料であるFe-Cr-Al合金に、ARB(Accumulative Roll-Bonding)法による強ひずみ加工と熱処理を加えた際の、組織の変化と、制振性、硬度、そして制振性と密接に関わる磁性の変化を調べた。平均結晶粒径17μmの再結晶材に、500℃にて、1サイクル当たりの圧下率50%(相当圧下ひずみ0.8)を、5サイクルまで施したところ、ラメラ状の平均結晶粒径厚さ110nmの超微細結晶粒組織が得られた。加工ひずみ量が増し結晶粒超微細化が進むに連れ、強度は2倍程度にまで上昇し、内部摩擦は半分以下にまで低下した。磁場中での内部摩擦測定ならびに磁化測定の結果、相当ひずみ0.8の加工で磁壁移動による内部摩擦はほぼ消失し、相当ひずみ2.4以上で磁壁移動以外(転位運動、粒界緩和)による内部摩擦が大きく低下することが明らかとなった。相当圧下ひずみ4の強ひずみ加工材に、種々の温度で30分の焼鈍を施したところ、500℃以下の温度では、硬度は僅かに低下し、内部摩擦は大きく上昇した。500℃焼鈍では、硬度は10%以下の低下を示すのみであるのに対し、内部摩擦は約60%もの上昇を示し、ほぼ強加工前の値にまで回復した。この変化の主因は、転位密度の減少により磁壁移動距離の増加し、かつ結晶粒サイズの変化が小さく、強度があまり低下しなかったことによることが、組織観察ならびに磁場中内部摩擦測定、磁化測定の結果により明らかとなった。さらに高温では、内部摩擦は焼鈍温度に対して極小値を示した後大きく上昇したが、結晶粒成長により、硬度が大幅に低下した。このように、強ひずみ加工と適切な熱処理の組合せにより、強磁性型制振材料においても制振性を損なわずに強度を大幅に上昇させられることが、本年度の研究により明らかとなった。
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