研究概要 |
本研究の目的は,4.4eV以上の遠紫外線を極めて高効率・高感度にセンシングする材料としてダイヤモンド(Eg=5.5eV)を提案するとともに,従来にない新しい深紫外線のフォトセンシング法を確立することにあった。本年度は,ボロンドープホモエピタキシャルダイヤモンド薄膜を成長させ,金属/ダイヤモンド/金属(MSM)構造から成るフォトセンシングデバイス構造を作製し,光応答特性を測定した。同時に将来のダイヤモンドpn接合を用いたフォトセンシングデバイスの性能を予測するための第一段階として,pn接合のキャリア濃度及びドーパント濃度分布を計算することによって,pn接合の特徴を把握した。この結果,以下の結論を得た。 (1)量子効率約30%および受光感度比(可視光ブラインド比)約3桁を持つ金属/ダイヤモンド/金属(MSM)型の紫外光センサーデバイス開発に成功した。同時に,試作したMSM紫外光センサーデバイスを用いて,220nm紫外光の連続照射時における暗電流比7ケタ倍の巨大光伝導効果を発見した。また,水素化されたダイヤモンド表面を受光面に用いた場合には,時定数の長い永続的光伝導特性も観測され,今後この減少の発現機構を調べることによって,更に量子効率の向上をはかる必要性が示唆された。 (2)ダイヤモンドpn接合における強いディープドーパント効果を初めて理論的に指摘し,ダイヤモンド電子デバイス設計の基礎を構築した。また,n型ダイヤモンドにおけるキャリア補償とディープドーパント効果を理論的に解析することによって,高品質n型ダイヤモンド結晶を得るための材料設計指針を初めて提言した。
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