研究課題/領域番号 |
15360378
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
杉本 諭 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (10171175)
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研究分担者 |
明渡 純 独立行政法人産業技術総合研究所, 機械システム研究部門, グループ長(研究職)
猪俣 浩一郎 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90323071)
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キーワード | エアロゾルデポジション法 / 厚膜 / 永久磁石 / 残留磁束密度 / 保磁力 / 成膜速度 / ビッカース強度 / 微細結晶 |
研究概要 |
1.目的 将来の電子情報通信機器ではさらにモバイル・ウエアラブル化が進み、希土類磁石にもさらに小型化、薄型化が要求されている。しかしながら焼結磁石を加工にて薄型化を試みても、結晶粒径が大きいため加工によって導入された表面欠陥の影響が大きく、磁気特性が劣化して機能しない。また樹脂と混練させシート化する(ボンド磁石)方法やスパッタなどを用いて薄膜を作製する方法があるが、前者は樹脂を含有するため磁気特性が低い、後者は成膜速度が遅くコスト高となり工業化されていない、などの問題点がある。本研究では、ナノメータオーダーの微粒子から構成される厚膜を5〜50μm/minとスパッタ法の500〜5000倍の速度で作製できるエアロゾルデポジション(AD)法を用い、従来薄膜技術ではカバーできない数μm〜500μmの範囲の膜厚を作製し、高性能厚膜磁石を作製することを目的とする。 2.方法 実験方法は以下に示す手順で行った。(1)市販のSm_2Fe_<17>N_x磁石粉末をAD用試料粉末として用いた。(2)粉末の磁気特性をVSMで測定、組織をFE-SEMで観察した。(3)上記粉末を用いてガス流速などの条件を変えてAD処理し、厚膜を作製した。(4)作製した厚膜の磁気特性をVSMで測定するとともに相の同定をXRD、組織をFE-SEMで観察した。またデバイスで重要な膜厚を接触型膜厚計、硬度を微小硬度計で測定した。 3.結果 エアロゾル・デポジション(AD)法により作製したSm-Fe-N厚膜の特性について調べ、以下の知見を得た。(1)X線回折の結果、厚膜はSm_2Fe_<17>N_x化合物と微量のα-Fe相から構成されていた。(2)10分間以下の成膜時間で45μm程度の膜厚が得られ、成膜速度も10μm/minと高速であった。(3)残留磁束密度Jr=0.4〜0.6T(重量磁化を密度7.67kg/m^3で換算)、保磁力μ_0H__<cJ>=1.6〜1.8T程度の磁気特性が得られ、粉末よりも高い保磁力が得られた。(4)マイクロビッカース強度HVは500〜700程度で十分な強度を示した。(5)厚膜は原料粉末よりも1オーダー小さい200〜400nmの結晶粒から構成されており、このため高保磁力が得られたと考えられる。(6)以上より、AD法は厚膜磁石高速作製方法として可能性があるといえ、他の永久磁石材料への応用も期待できる。しかしながら、一方では高性能化のために異方性化技術などについても検討する必要があると考えられる。
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