研究課題/領域番号 |
15360379
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
粉川 博之 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10133050)
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研究分担者 |
石橋 良 (株)日立製作所, 日立研究所, 研究員(研究職)
佐藤 裕 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00292243)
王 占杰 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (20323074)
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キーワード | 粒界構造 / 粒界腐食 / オーステナイト / 鋭敏化 / クロム炭化物 / クロム欠乏 / 粒界制御 / 加工熱処理 |
研究概要 |
オーステナイト系ステンレス鋼の粒界腐食は、高温でCr炭化物が粒界析出するため粒界近傍のCr濃度が著しく低下する粒界鋭敏化が原因で生じる。最近の申請者らの研究などから、粒界析出の生じ易さが粒界ナノ構造(粒界での原子配列)に依存し、低エネルギー構造を持つ粒界、例えば対応格子理論に基づいた対応粒界ではCr炭化物が析出し難いことが明らかになっている。さらに、焼鈍過程で生じる高エネルギー粒界からの双晶発生がその部分のエネルギーを低下させる粒界構造変化を利用して、対応粒界が高密度で広く均一分散した粒界ネットワーク組織をオーステナイト系ステンレス鋼中に作り出し、鋭敏化し難く粒界腐食に強いステンレス鋼の試作に成功した。本研究では、この粒界工学的プロセスの最適化と一般化を目指して、対応粒界分散ネットワークをオーステナイト系ステンレス鋼中に効率よく構築するため手法を明らかにすることを目的とする。本研究グループは、304型オーステナイト系ステンレス鋼を加工熱処理による粒界制御により、低エネルギー粒界の存在率が極めて高く、かつ均一に分布した最適粒界構造分布制御が実現し、耐粒界腐食性が通常母材に比べて4倍以上向上することを報告した。そこで、今年度は、304型より耐腐食性が高くより過酷な腐食環境下で使用されることの多い316型オーステナイト系ステンレス鋼に対して同様な加工熱処理による粒界制御を試みた結果、304型ステンレス鋼とはわずかに最適化条件は異なるものの、基本的には同手法で粒界構造分布の最適化が可能で、316型オーステナイト系ステンレス鋼に対しても対応粒界が高密度で広く均一分散した粒界ネットワーク組織を創製できることが明らかになった。さらに、腐食試験の実験結果から、最適粒界制御した316型ステンレス鋼の場合も通常の同種ステンレス鋼に比べて4倍以上耐粒界腐食性が優れていることが明らかになった。
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