金属材料の防食対策の年間コストはGDPの数%(約10兆円)に及んでおり、そのなかで塗装コストは最も大きな割合を占めることから、橋梁などでは無塗装で使用できる耐候性鋼が注目を浴びている。しかしながら、耐候性鋼が普及するためには、錆び生成過程と環境因子との関係を明確にする必要がある。本研究では、それらを自動でモニタリングする電気化学インピーダンス法の原理に基づく腐食モニタリングシステムを開発した。このシステムの特長は、実環境に暴露されている金属材料の腐食速度および大気腐食の進行に重要な材料表面の濡れ状態および温度、湿度などの環境因子を遠隔操作により同時にモニタリングできることである。すべて自動測定で、データはモニター内のメモリーに記録され、携帯電話を使ってデータを実験室に取り込むことができる。 炭素鋼、JIS耐候性鋼およびNi系海浜耐候性鋼で作製した櫛形プローブ電極および同鋼材で作製した腐食質量減測定用の試験片を、沖縄、富津、銚子、つくばの4箇所に暴露し、開発したシステムにより、それらの材料の腐食状況を30分に1回の頻度で、約2.5年間モニタリングした。その結果、暴露場所の違いによる腐食性の違い(腐食性の順:沖縄>富津=銚子>つくば)、および材料による耐食性の違い(腐食速度の順:炭素鋼>JIS耐候性鋼>Ni系耐候性鋼)が、同手法により明確に評価できることを示した。さらに、0.5年、1年、2年、3年(ただし、3年目は継続中)で腐食質量減用の試験片を引き上げ、腐食減とモニタリングデータとの相関を調べた結果、分極抵抗の逆数の平均値と質量減から求めた平均の腐食速度の問には極めて高い相関があることがわかり、この手法で測定されたモニタリングデータが、直接、耐候性鋼の腐食量に変換できることを示した。これらの成果は、別紙に示したように、国際会議あるいは国際誌にすでに公表している。
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