研究概要 |
現在,最強の永久磁右材料としては,1983年に発見されたNd-Fe-B系が広く使用されている.これまでにも新しい高性能磁石の開発が数多く行われてきたが,Nd-Fe-B系に代わる材料は見いだされなかった.しかしながらNd-Fe-B系磁石の発見から既に20年近くを経ており,さらに優れた特性を有する新しい磁石材料の出現が強く求められている.永久磁石の性能評価には「最大エネルギー積」が用いられる.この値が大きいほど優れた永久磁石といえるが,そのためには保磁力および磁化(残留磁化)を向上させることが必要である.しかし一般に,保磁力の高い材料は磁化が低く,逆に磁化の高い材料は保磁力が低くなる傾向があり,その両立は困難であった.近年,この問題点を解決する手法の一つとして,従来のNd-Fe-B系のようなハード磁性相単相の磁石ではなく,保磁力の高いハード相に高い磁化を有するFeなどのソフト磁性相を複合化させ,各相が交換相互作用することにより高保磁力・高磁化という,ハード・ソフト両方の特徴を併せ持つナノコンポジット磁石の作製が試みられている.ソフト・ハード各相間の交換相互作用を働かせるには,ソフト相が数10nm程度の微細混合組織となる必要があるため,両相各粉末の単純混合ではナノコンポジット磁石の作製は困難である.そこで現在のところ,超急冷法やメカニカルアロイング法により,試料を一旦アモルファス化し,適当な条件の下で結晶化させ,微細混合組織を得ている.上記いずれの場合にも,超強力磁石の開発には希土類磁石が不可欠であるが,錆び易いことが最大の問題である。今回申請した電気化学的手法により検討した結果,主相のFeNd_<14>B相と粒界相のNd-rich相等との自然電位の差に起因することを明確にした。
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