個々の粒子が膜形成の基本要素であることから、単一粒子の固体基材上での偏平現象を系統調査し、また粒子偏平における支配因子の影響を解明することにより、溶射プロセス制御化への効果的指針を得ることができると考える。本研究では、偏平温度場および雰囲気圧力の両者に起因する粒子偏平形態遷移現象を3次元マッピングとして捉え、溶射プロセス制御化への指針を確立すること、またこれら相互の関係性を通し溶射粒子偏平問題の本質解明を行うことを目的としている。 初年度は当初の予定に従い下記の研究を遂行し、所定の成果を得た。 1)遷移圧力の粒子材質依存性に関する系統調査 ステンレス鋼基材を用い、種々の純金属粒子について遷移圧力の粒子材質依存性を系統調査した。また、これまでに明らかにしている遷移温度の粒子材質依存性と、得られた遷移圧力の粒子材質依存性について、両者の相違性を吟味した。その結果、鉄粒子などの若干の例外を除けば、遷移圧力の粒子材質依存性と遷移温度の材質依存性との間には極めて高い類似性が認められた。すなわち、溶射粒子偏平形態遷移現象に対する影響において、基材温度変化と雰囲気圧力変化の間には等価性が認められた。このことは、基材温度を変化させる行為ならびに雰囲気圧力を変化させる行為はともに等価であり、それら変化のさらに根底にあって、粒子偏平現象を支配するなんらかの影響因子が存在することを示唆している。種々の知見を総合し、その根本的支配因子が動的ぬれ性にあると考察した。 2)遷移温度および圧力の3次元マッピング 代表的な粒子材質としてNiを採り上げ、ステンレス鋼基材上での円盤状偏平形態発生割合を基材温度および雰囲気圧力の組み合わせに対し系統調査し、温度および圧力に関する3次元遷移マッピングならびにそのデータベース化を試みた。ただし、データのすべてを取得するには至らず、目下継続中である。
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