研究概要 |
高度医療と高齢化が進む中,医療機器の市場は年々増加傾向にある.ほとんどの医療機器が高価であることと、使用されている機器のほとんどは輸入機器であり国産機器は約20%と低いことが問題とされている.そのような点から,塑性加工により安価でかつ高品質な国産の医科歯科用マイクロパーツの製造が期待されている. しかし,医科歯科用材料であるステンレス鋼,チタン,形状記憶合金などいずれも塑性加工性が悪いなどの理由により医療機器部品のマイクロ化技術は進んでいない. 本研究ではカテーテルやステントに利用される極細管,痛みを和らげる極細の注射針,歯列矯正用ワイヤや医科歯科の検査・手術・治療機器に使用する極細線やマイクロねじ,スプリング,リベットなどのマイクロパーツの製造技術について検討した. 主として,引抜き加工法を用いて,実験とFEMシミュレーションの双方から管材,線材の極細径化でかつ機械的性質,表面性状が良好なマイクロパーツの製造を試みた.これまで直径が500μmが限界といわれていたチタン線やステンレス鋼線の四角形線で,100μmのマイクロ異線形の製造を可能にした.高機能である形状記憶合金,ステント用の管材製造においては,軟質のマンドレルを利用した引抜きを提案し,管の内外表面の性状がよく,直径約1mm近くまで細経化する加工条件を明らかにすることができた.また,この研究で得られた極細線材を用い,M0.8マイクロねじ,数百μmのスプリング,ワッシャなどのマイクロパーツの製造研究も行うことができた.この研究により,新しい医科歯科用機器の開発に貢献しつつある.
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