研究概要 |
1.高度磁気制御溶接法の手法検討 (1)立向・上向姿勢溶接への磁気制御適用拡大手法の検討 i)有望手法設定のための磁場分布の試算:溶接開先を跨ぎN・S極が対向する馬蹄形電磁石による磁場(溶接線に垂直な磁場)の付与を想定し,電磁石の設計パラメータ(磁化電流,コイル巻数,鉄芯断面積等)と開先部条件(母材の種類(強磁性体,非磁性体),板厚,開先間隙量)及び溶融池部の漏れ磁束の関係を試算した。前述の各種パラメータの適正化により,既溶接部への磁束の短絡が生じる場合でも,0.01T〜0.07Tと磁気制御を行うに十分な磁束密度を得るが可能となることを示した。 ii)電磁力の試算:添加ワイヤの加熱電流が100A以下の小電流でも,重力と同等以上の上向電磁力(体積力)を溶融池内に発生しえる事を示した。 (2)予備実験による可能性の把握 i)磁気制御装置の製作:上記試算に基づき,電磁力ツール設備(非対称交流も発生できる磁化電源及び特殊電磁石を製作した。 ii)コールドモデルでの計算と実測値の比較:板厚3mmの軟鋼板(開先間隙3mm)で0.02〜0.07Tの漏れ磁束密度を得前述の計算とほぼ対応していることを明らかにした。 iii)上向姿勢での溶接実験:磁場を付与しない場合には下向き重力と表面張力のバランスにより,ビード上面はほぼフラット,下面は幅広く大きい凸ビードが形成された。これに対し磁化電流が0.2Aの条件では適度な上向電磁力によりビード形状は上下対称になった。0.4Aの場合には過大な電磁力により,ビード下面はフラット,ビード上面は凸になる現象を呈し,磁気制御によるビード形状制御効果が顕著であることを確認した。また,非対称交流磁場による実験では上述のビード形状制御効果と同時に,凝固結晶サイズの微細化効果の兆候も認められた。 さらに,このような上向電磁力により溶込み形状の変化も認められ,溶込み制御も可能な現象も認められた。 2.高度磁気制御溶接実験装置の設計 1.項の計算,予備実験結果をもとに,上向,立向,下向姿勢での本格的な磁気制御溶接実験と溶接姿勢を連続変化しながら磁気制御を行う溶接装置の設計を行った。
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