光ROMディスクの開発において、微細加工技術は将来の超高密度記録を実現する上で必須な技術である。通常は電子線利用や光源の短波長化により、微細化を実現している。しかしながら、これらの方法は、装置の大型化、光源および光学材料の開発の困難さといった問題があり、また、それに伴う研究開発の高コスト化も問題となっている。本研究ではナノヒートスポットによる低コスト・高速・大面積の微細加工法の研究開発を行っており、可視域のレーザー光を用い、光で直接露光するのではなく、その光によって発生する熱を利用した微細加工法の研究開発である。本研究の微細加工法は、通常の光露光法に比べ遥かに加工寸法を小さくする事が可能、既存の光源や光学材料が利用可能なため、劇的なコスト低減といった利点を持つ。微細加工の原理は以下の通りである。通常、レーザースポット内の光強度分布はガウス型であり、これによって生じる温度も分布を持つ。従って、ある一定温度以上の領域を光スポット径より小さくでき、この温度領域内だけに熱反応を起こすことにより微細加工を実現するのである。今回用いた試料は、TbFeCoとZnS-SiO_2からなる多層膜であり、この組み合わせは、400℃以上で相互拡散をおこし、体積が膨張するという性質を持つ。この多層膜をガラス製のディスク基板上に作製し、これを回転させながらパルス光を照射し、多層膜に熱を加えた結果、直径50nmのドットをディスク円周上に形成することに成功した。また、ドット間離も50nmを実現している。この大きさと距離はここで用いたレーザー光と光学系から計算される回折限界の1/6程度の寸法である。また描画速度は3m/sであり、実用的な速度であることも確認した。更に、単純なドット作製だけでなく、大きさ1ミクロン程度の文字を試料表面に加工することにも成功しており、より複雑な加工に適用可能であることを示した。今後は加工速度の高速化、ドット高さの改善を行い、早期実用化を目指す。
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