Si-Al融液を用いた凝固精製プロセスにおいて、固体Si中に取り込まれる不純物元素濃度の検討を行った。特に、価電子制御において重要なAl、P、ライフタイムキラー元素であるCuに関して固体Si中、及びSi-Al融液中熱力学的性質を明らかにした。 まず、Al、Pは固体Si中で拡散係数が小さいため、その溶解度測定では、制御された温度勾配の中で溶融帯を低温部から高温部へ移動(固体Siを高温部で溶融、低温部で析出)させるTemperature Gradient Zone Melting法による固液平衡測定手法を確立した。単結晶SiでAl箔をはさみ、20℃/cmの温度勾配をもち900〜1100℃に制御された炉中で約20時間保持し、実験後の試料をEPMAにより観察・定量分析を行った。一部の試料については、ホール係数測定から、EPMA分析結果の妥当性を確認した。Alの固溶度はこれまでの報告に較べやや大きい値を示し、固体Si中Alの活量係数という形で熱力学的評価も行った。一方、Pについては、純Si融点での平衡分配係数に較べ、Si-Al系での値は小さくなり、Si-Al融液を用いた精製によるPの効率的除去が示唆された。 拡散係数の大きなCuを含む系に関しては固体SiをSi-Al-Cu融液中に保持することによりCuを固体Si中への拡散させ測定している。実験後の固体Siおよび融液の分析を行い、熱力学的評価を行っている。固体Siと融液間でのCuおよびAlの分配はほぼ直線関係が得られており、引き続き測定を行うことにより、900〜1100℃における精度の高い熱力学データを求める予定である。 今後は、これらの方法で、BやFeについての低温精製の可能性を明らかにすると共に、凝固精製でポイントとなる界面物性について評価を行い、実際にSi-Al融液の低温凝固試験を行うことにより新プロセスの精製能力を実証する。
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