研究概要 |
昨年度に引き続き、実際にAl-Si溶融シリコンを制御された冷却速度で一方向凝固させ、その精製効果を確認するとともに、太陽電池用シリコン原料精製のプロセス化のために非常に重要となる、固体シリコンの晶出・採取方法の最適化の条件を検討した。電気抵抗炉を用いて黒鉛るつぼ内でSi-Al融液を一定温度で溶融させた後、一定速度で融液を引き下げ底部から凝固させたところ、冷却速度を変化させてもファセット界面を保持した凝固析出は見られず、樹脂状の晶出結晶しか得られなかった。酸処理(共晶部の酸溶解)による晶出シリコンの回収により、昨年度までの熱力学測定結果から予測された非常に高い精製効果は確認されたものの、密度差(重力)では効率的に固液分離することができず、Si-Al液相中固体シリコンが均質に分散したものとなった。しかし、同様の実験を高周波誘導加熱により行ったところ、密度差とは逆に、析出シリコン結晶がるつぼ下部に集積し、ほぼ最終液相部と晶出シリコンに分離することに成功した。これは、高周波のピンチ力により生ずる対流(中心部で下降、周辺部で上昇)により、晶出シリコンがるつぼ下部に運ばれ押しつけられて留まるためと考えられた。この方法で、効率よくSi-Al融液からのシリコンの凝固精製を行えることが明らかになり、また、P, Bの精製効果も同時に確認された。 また、凝固固液界面での濡れやその界面張力が凝固プロセス最適化条件に重要な知見であるため、その測定を行う、測定セットアップを作製した。固体シリコンとSi-Al融液間の濡れ、接触角の測定を試みているが、酸化を完全に防ぐことが非常に困難であり、固体シリコンとPb-Si融液間の濡れや接触角について測定を行った。不純物、特にシリコン表面の酸素がその濡れに大きく影響を及ぼすことが判明し、同様に微量不純物が凝固挙動に大きく影響を及ぼすものと推察された。酸化抑制が確実になり次第、Si-Al融液についても確認を行う予定である。
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