研究概要 |
昨年度までの研究成果に基づき,主に溶融塩化物中でのTiの不均化反応を利用した鉄鋼材料等へのTi合金コーティングにおける成膜条件について研究を行った.基材金属には,炭素鋼(S45C),純Fe,Ni,SUS304板とともに,Cr,Fe-Cr合金も用いた. NaCl-KCl等モル溶融塩中での処理により形成される炭素鋼,Fe, Ni基材上のTi合金コーティング層について,コーティング層の組成や性状,及び成膜速度について詳しい検討を行い,成膜条件を明らかにした.また,この処理によりTi合金コーティングを行った炭素鋼等の塩水に対する耐食性を調べ,耐食性が非常に向上することを確認した.SUS基材上への特異な高Ti含有率コーティング層形成について検討するため,純CrとFe-20%Crを基材とした処理を試みた.Cr基材上には性状は良好ではないものの高Ti含有率層が形成されていたが,Fe-Cr基材上にはFe基材と同様なFe-Ti合金層が形成されていた.これらの結果から,Crの存在がTiコーティング層の形成に大きな影響を及ぼすことが確かめられた.一方,より低温での処理を目的としてLiCl-KCl共晶溶融塩を用いたTiコーティングも試みたが,良好なTi合金コーティング層は得られなかった. 一連の研究により,鉄鋼材料等の表面への高耐食性Ti合金コーティング膜が形成可能であることを示した.また,その成膜条件を明らかにするとともに,Crを利用することにより高Ti含有率の緻密なコーティング層が形成可能であることを明らかにした.本年度は,各種基材上へのMo, Mo合金のコーティングについて検討を開始したが,現在のところ十分な成果は得られなかった.
|