研究概要 |
原子間力プロープ顕微鏡(AFM)を用いて,溶液中界面張力勾配下の微細粒子に働く力を直接測定することを目的として、今年度は以下のことを行なった。 1.測定装置システムの構築 1)溶液-微細粒子間界面張力勾配発現装置の設計・製作 密度対流を抑制できるよう薄くした液体セルを用い,その上下方向に温度勾配,界面活性剤の濃度勾配を生じさせる。そのことにより界面張力勾配を発現させ,その中に,AFMのカンチレバー探針部につけた微細粒子を浸漬し,粒子に働く力を測定できる装置を製作した。 2)AFMの購入,改造 購入したAFMに装着する特注の長いステンレス製カンチレバーを改良,製作し,このカンチレバーを溶液セル中に浸漬して粒子に働く力が測定できるよう,改造,調整した。 3)カンチレバー探針部への微細粒子の付着技術の開発 今年度はカンチレバー探針部への微細粒子の付着が比較的容易な固体粒子、すなわちポリスチレンラテックス(PS)微粒子と黒鉛微粒子を対象として、その付着技術を開発し、測定に供することができた。 4)マッハツェンダー型干渉顕微鏡の1),2)の装置への装着 マッハツェンダー型干渉顕微鏡の本研究の上記1),2)の装置への組込みについては,メーカーの都合により、現在製作中である。しかし温度勾配下での固体微粒子に対する測定では、マッハツェンダー型干渉顕微鏡を用いる必要がないので、今年度の計画についての直接の支障にはならなかった。 2.界面張力勾配下での微細粒子に働く力の測定 純水中、温度勾配により発現する界面張力勾配のもとで、固体微粒子(PS微粒子、黒鉛微粒子)に働く力の測定を行った。ブランク測定系としては、等温純水系を用いた。先ず、温度勾配下(垂直上方に向かって直線的に温度が上昇する状態)でのPS粒子の沈降速度は、重力のみが働くとするストークスの法則に殆んど従うか、黒鉛粒子の沈降速度はストークスの法則より、著しく遅くなり、界面張力勾配による垂直上方への力が働いているとみなせることがわかった。上記1)で開発したAFM測定系による力の測定においても、PS粒子に比較して、黒鉛粒子には明らかに垂直上方に重力とは逆方向の力が働いていることが確認できた.
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