研究概要 |
ナノ〜サブミクロン粒子集団の配位構造を自在に構成できれば,従前にない高効率・高機能材料の開発が可能と期待される。本研究では,基板表面電位を自在に設定し,吸着粒子集団の構造形成速度過程と生成構造を制御し得る手法の構築を目指し,以下の成果を得た。 1.実験的検討:種々の表面電位に制御した導電性基板上への,正電荷を持つ単分散コロイド粒子の吸着実験を行い,被覆率や粒子配位構造に対する基板電位の効果について検討を行ったところ,表面電位-28mVという値を境に,これ以上の電位の表面では,粒子がほぼ一様な間隔をあけてかなり密に吸着するが,電位がゼロや正にならなくとも,-20mV程度以下の表面では粒子がほとんど吸着しないことがわかった。これは,帯電表面近傍の強く表面配位して構造化した水の層の存在が強い付着をさまたげたものと推定される。このような系で弱く吸着した粒子は表面との摩擦が極端に少ないため,秩序化した吸着構造を取る可能性が考えられる。 2.理論的検討:本研究で見出した,秩序構造化の鍵因子である「一方向平均力」について,その起源と推算法を検討すべく,広範な条件下でのブラウン動力学シミュレーションを行い,2次元剛体球系の秩序転移を参照系に考察を深めたところ,コロイド粒子まわりに存在する斥力領域が,実効的な粒径を大きくするように作用すると考えることで,Alder転移のCriteriaと統合的にモデル化でき,秩序化過程が予測可能となることを明らかにした。また,摩擦力が秩序化を妨げる効果がブラウン運動の抑制に起因すると考え,温度を下げた系と同様の現象に収敏すると仮定すればその効果を予測可能であることを示した。 以上の検討により,基板の表面電位や摩擦力といった特性が,その上に吸着するコロイド粒子の配位構造に与える影響を実験的・理論的に検討・総括し,現象の理解と工学的モデル化をなし得たと考える。
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