平成15年度は以下の3つのプロジェクトを遂行した。 1)オリゴペプチドを構成するアミノ酸残基数の不斉認識能への影響 2)オリゴペプチドを構成する構成アミノ酸残基の絶対配置と不斉認識能との相関 3)表面プラズモン共鳴を利用した新規分子認識素子の開発 まず1)であるが、構成アミノ酸残基としてグルタミン酸ベンジルエステルを採用し、1より8量体のオリゴペプチド誘導体を不斉認識部位形成候補物質に用いた。鋳型分子としてBoc-L-Trpを採用した鋳型膜はその構成アミノ酸残基数が3から6のものは不斉認識部位へと変換された。またその不斉認識は構成アミノ酸残基数4のテトラペプチド誘導体で最高値9.5x10^3mol^<-1> dm^3を与えた。これは、オリゴペプチド誘導体を不斉認識部位形成候補物質として採用し、簡易分子インプリント法を適用することによりこれを鋳型膜へと変換するとき、トリペプチド誘導体ならびにテトラペプチド誘導体が不斉認識部位形成候補物質として適していることを示唆するものである。 2)では形成される分子認識部位の不斉認識能が構成アミノ酸残基の絶対配置ならびに鋳型分子の絶対配置の両者に依存すること、換言すれば、両者の絶対配置が一致する場合にのみ、それらと同一の絶対配置をもつ標的化合物を基質特異的に不斉認識することを明らかにした。この知見をもとに、ラセミ化合物を鋳型分子に用いても、目的とする不斉認識能を有する鋳型膜を獲得することが可能であることを明らかにした。さらには、電気透析法を適用することにより、吸着選択性を反映する透過選択性を発現することが可能であることをも明らかにした。 3)簡易分子インプリント法を適用することにより得られた鋳型膜の性能評価を迅速に行なうことにより、高効率に新規な不斉認識部位形成候補物質を探索することが可能になる。また、これは新規な分子認識センサーデバイスを開発することにも相当する。この観点より、新規に調製された不斉認識部位形成候補物質の鋳型膜としての可能性を表面プラズモン共鳴を利用することにより行なった。その結果、表面プラズモン共鳴を適用することにより、従来とは異なり短期間に不斉認識部位形成候補物質の光学分割膜としての可能性を評価することが可能であることを明らかにした。
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