研究概要 |
硫酸や塩酸といった液体酸は重要な化成品の製造に必要不可欠な触媒である。しかし、これらの液体酸は繰り返しリサイクルできる触媒ではなく、中和等の酸触媒と製品の分離、廃酸処理には多くのエネルギーが必要である。また、液体酸は腐食性の毒物であるため、安全性の確保、プラントの維持にも膨大な労力を割かなければならない。繰り返し使用することができ、分離・回収が容易で毒性の少ない固体酸は、この課題をクリアーする一つのキーワードであり、ポリアニオンナノシートは高性能固体酸触媒のポテンシャルを有している。 プロトン交換したカチオン交換性層状金属酸化物は固体強酸のポテンシャルをもつ材料であるが、狭い層間にあるブレンステッド酸を反応に利用することはできない。しかし、ある種の層状金属酸化物のアニオン性2次元金属酸化物単結晶シート-ポリアニオンナノシート-をソフトケミカル的手法で剥離し、これをランダムに再凝集させると、このブレンステッド酸は表面に露出し、反応に利用できるようになることを申請者は見出した。これまでの研究から、HTiNbO_5、HNb_3O_8等のいくつかのポリアニオンナノシートが新しい固体強酸触媒としてエステル化反応、加水分解反応といった酸触媒反応に高い活性を示すことが明らかになっている。特にHNb_3O_8ポリアニオンナノシートは現在工業的に使われている固体酸触媒含水ニオブ酸の2倍以上の酸触媒活性を示すことが見出されている。 これらのポリアニオンナノシートではそれを構成する金属酸化物オクタヘドラル上に形成される架橋型水酸基M-OH-Nb(M:Ti,Ta,Nb)が90%以上の濃硫酸の酸強度をもつ強酸点として働いていることが^<13>C-MAS-NMRによって明らかにされた。一方、この架橋型水酸基を形成しないポリアニオンナノシートでは酸触媒活性は全く示さない。現在、これらの知見に基づいて、更に高性能な固体強酸を設計している。
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