固体触媒表面において生起する光化学反応は、光照射によって惹起される触媒表面およびバルクでの電子励起と、それに引き続く不均一触媒反応により構成されている。実用的な光触媒の多くでは、その表面は不均一であり、さまざまなナノ-ミクロ構造が存在する。このような固体表面での光触媒反応を統合的に理解し、それを新規触媒開発に生かそうとするとき、触媒表面での光励起状態を表面ナノ構造との関連で捉えることは必要不可欠である。 本研究ではこのような観点から、光触媒の表面構造と光(紫外光)との相互作用をナノメータスケールで検討する手法として、走査型トンネル顕微鏡(STM)を利用したアパチャレス近接場光学顕微鏡を試作した。本装置は光源として紫外線に加えてX線も利用できる。このX線光源としては、電子励起による通常のMgターゲットからの特性X線ならびにシンクロトロン放射光が使用可能である。本装置は現在試運転中である。またこれと平行して、光触媒として多用されている酸化チタン(TiO_2)(110)表面ならびに将来の太陽光電池として期待されている有機太陽電池について、光励起下における触媒表面ナノ構造と局所電子励起状態との相関を、STMおよびケルビン力顕微鏡(KFM)によりナノメータスケールで検討した。その結果、TiO_2(110)単結晶表面の光励起サイトの原子レベル検出に成功した。特定のサイトにおいては、TiO_2のバンドギャップよりエネルギーの低い可視光による励起も観察された。このサイトはTiO_2(110)単結晶表面の酸素欠陥に起因している。また有機太陽電池の材料として期待されている共役ポリマー(MDMO-PPV)とフラーレン(PCBM)からなる薄膜の光応答をケルビンカ顕微鏡を用いて検討した。
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