研究概要 |
"W/Oエマルションを利用した反応システムの流体集積回路化"に関して,本年度はwater-in-oil(W/O)エマルションのオンサイトでの形成(チップ上で液滴を油中に生成する方法)を主目的に研究を行った。具体的には,電界を用いて液滴を生成することを試みた。そして,直流電圧を印加することで水-油界面にて静電霧化によって水滴を形成することができた。この方法を行うために,流路中に親水性・疎水性のパターンを形成する簡便な方法を見出した。ガラス基板上でPDMSを重合させると,それを剥がした部分は疎水的になる。そこで,部分的にPDMSを剥がしてフッ酸水溶液にて処理することでその部分のみを親水的にすることができた。最終的にPDMSを全て剥がすと親水性・疎水性のパターンが形成される。流路中に水溶液と油を導入して,油側を接地し,水溶液側に正極性あるいは負極性の直流高電圧を印加することで,静電霧化によって平均粒径約9.2μmの液滴を生成することができた。しかしながら,粒径の変動係数が0.3であり、これは生成後の液滴の融合によるためと考えられる。 これまでに,静電霧化による液滴の形成を試みた水溶液は,純水,TE,50%グリセロールである。これらの溶液にさらに界面活性剤を加えることで融合の抑制が行えると考えられる。この方法では,機械的ポンプを一切使うことが無く,電界のみで液滴の生成・輸送が行える。また,クロスフローによって液滴を形成する方法と異なり,一度に多くの比較的粒子径のそろった液滴を形成することが可能であり、電界のみで液滴の生成・輸送が行えるので、幅広いマイクロ反応系に応用できると期待される。
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