研究概要 |
前年度の研究により,静電気的に微小液滴をマイクロチャンネル中に導入することができた。そこで,今年度はマイクロチャンネル中に導入した微小液滴を静電気的に操作することを目的とした。 まず,油中の水滴が交流電界中でどのような挙動を示すかを検証した。線対平板上の電極形状で交流電界を印加している所に水滴を置くと,3kVp以下の電圧では誘電泳動力によって水滴が線電極に引き寄せられた。5kVp以上になると水滴が激しく振動しながら細かく分裂している様子が見られた。これまで,マイクロチャンネル中に液滴を作る研究は様々に行われてきたが,その液滴を分裂させることについてはほとんど報告がない。そこで,この現象をマイクロチャンネル中の水滴に対して応用した。 幅250μm,深さ5μmのマイクロチャンネルをPDMS上に形成し、PDMSを接着させるガラス基板上にCr/Auで幅100μmの高電圧電極と幅5mmの接地電極を電極間距離5mmで配置した。マイクロチャンネル内に微小水滴(W/Oエマルション)を導入し,電極に交流高周波電界(14kHz,3-5kV)を印加すると,電極近くの液滴から流れの方向に沿って,さらに微小な液滴が噴出した。噴出された液滴はおよそ直径5μmであった。また,液滴径のそろっていないW/0エマルションをこのチャンネルに導入し電界部分を通過させると,それぞれの液滴が微小液滴の噴出によって細かくなり,より液滴径が均一なW/0エマルションとなることが分かった。これによって,交流高周波電界をエマルション化のフィルターとしても用いることができることが明らかになった。この現象を用いることで,油中においてマイクロリアクターとして機能させている水滴を,ごく少量の試料を他の液滴に供給できるマイクロタンク/ポンプとしても機能させることができると期待できる。
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