研究概要 |
細胞組織体(オルガノイド)形成用スキャホールドの開発に関して,本年度研究成果概要を以下に示す。 1.オルガノイド形成用多孔質担体の作製に関して,孔径・担体表面特性が制御可能な担体の作製法に関して検討を行った。この結果,加熱・溶融状態の高分子(ポリエチレン・ポリプロピレン等)に塩化ナトリウム粒子を高密度に充填し,成形後塩化ナトリウム粒子のみを除去する手法によって,塩化ナトリウム粒子とほぼ同じ大きさの孔径を有する空隙率約70%の多孔質体を作製する手法を確立した。 2.肝細胞オルガノイドが生存できる厚みを考慮した中空糸の作製方法に関して,内径330μmの中空糸に熱延伸処理を行うことにより中空糸径の小口径化に取り組んだ。その結果,加熱温度・延伸速度等を検討することにより内径100μmの小口径中空糸を作製する手法を確立した。 3.上記熱延伸操作によって作製した内径190μmの中空糸を用いて肝細胞オルガノイドを作製し,内径330μmの中空糸を用いた場合との機能比較を行った。その結果,肝細胞オルガノイド内部での酸素枯渇による壊死層の発生が抑制される傾向が示され,中空糸内部初期固定化細胞数あたりの機能発現レベルが1.5〜2倍に向上した。今後,内径100μmの中空糸を用いることでさらなる機能発現の向上が期待される。 4.細胞間接着因子としてE-cadherinおよびconnexin-32分子に着目し,ポリウレタン発泡体孔内における球状オルガノイド(スフェロイド)形成と機能発現に与える影響について検討を行った。その結果,これらの分子の接着を阻害することにより肝細胞のスフェロイド形成が阻害され,また肝特異的機能の一つであるアルブミン分泌能の発現レベルが低下することが示された。この結果,スフェロイド形成には上記細胞接着因子が必要であり,また肝特異的機能発現との間に密接な関係があることが示された。
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