研究概要 |
本年度研究成果概要を以下に示す。 1.肝細胞オルガノイドが生存できる厚みを考慮した中空糸の作製方法に関して,内径330μmの中空糸に対し熱圧縮操作を行うことにより楕円断面を有する楕円断面中空糸の作製に取り組んだ。中空糸の圧縮方法,加熱条件を検討することにより,中空糸内部に細胞播種後の短径が約100μmとなる楕円断面中空糸の作製技術を確立した。 2.上記楕円断面中空糸の内部に初代ラット肝細胞を遠心力によって充填し,中空糸/オルガノイド培養により作製した中空糸の評価を行った。本中空糸内部で形成されたオルガノイド内部の組織学的評価では,オルガノイド内部に酸素枯渇による壊死層の形成は観察されず,この結果,中空糸内部での細胞維持率は未加工の中空糸(内径330μm)の中空糸と比較して1.5倍程度に向上し,オルガノイド形成用スキャホールドとしての楕円断面中空糸の有用性が示された。 3.上記楕円断面中空糸を充填した人工肝臓モジュールとして,容積4.3cm^3のモジュールに336本の楕円断面中空糸を充填したモジュールを作製した。本モジュールは約0.6gの肝細胞が充填可能なラットスケールのモジュールである。灌流培養によってモジュールの評価を行った結果,内径330μmの未加工の中空糸を充填した同スケールの人工肝臓モジュールと比較してモジュール内充填細胞数あたりの機能発現レベルでは1.5〜2倍の高機能発現を達成した。さらに従来より開発を行っていた,中空糸を微小間隔で規則的に配置し,中空糸外部にロータスルート状のオルガノイドを配置する肝小葉類似構造型人工肝臓モジュールと比較した結果,オルガノイドの形態維持の観点から優位性が示され,長期間にわたる高機能維持が可能であることが示された。 以上の結果,本研究で開発したオルガノイド形成用スキャホールドおよびモジュールは新しい人工肝臓として有望であることが示された。
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