本年度は以下の作業を行った。 1.固体高分子膜を使用した燃料電池セルを試作し、この燃料電池セルに対して衛星用燃料/酸化剤の供給を可能とする設備を用意し、衛星用の推進剤による発電試験を実施した。 2.特に、低温保管特性に優れる衛星推進剤であるモノメチルヒドラジン(MMH)を燃料としたときの燃料電池出力試験において、通電時に見られた出力電圧から、発電時にはダイレクトメタノール形燃料電池(DMFC)と同程度の出力電圧となることを確認することができた。 本試験を通じ、大電流通電および連続運転においては材料の耐腐食性が課題となることが明らかになった。.特に燃料電池材料のうち、一般的にガス流通用セパレータとして用いられる炭素材料が衛星推進剤や酸化剤により強い腐食を受けることが明らかになった。 このことから、セパレータ用炭素材料の探索を行い、アモルファス性を有するガラス状ハードカーボンにおいて高い耐薬品性を確認した。 このガラス状ハードカーボンは、一般的な炭素材料に対して高い腐食性を示した衛星用酸化剤である四酸化二窒素(NTO)に対しても、高い耐腐食性を見出すことができている。 既に、この新規炭素材料を使用した燃料電池の二次試作に着手し、現在試験を継続中である。 また、推進系に関わる試験としては、低温下における電磁弁の駆動および気密試験と、低温下における、四酸化二窒素(NTO)とモノメチルヒドラジン(MMH)の反応性検証を実施した。電磁弁の駆動試験は、零下40~50度において実験を行ったが、低温下反応実験は、零下10 degCでの予備的な実験である。結果によれば、電磁弁の特性は良好であるほか、反応性にも十分なマージンのあることが確認されている。次年度試験では、零下40~50度での反応性試験および電磁弁を含むスラスタ形態での燃焼・推力試験を実施する計画である。電磁弁に関しても、とくに高分子材シート部の適合性試験、ガラス転移条件の影響を見極める計画である。
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