研究課題
基盤研究(B)
航空機・ロケット等の航空宇宙輸送システムや人工衛星等における複合材料の適用拡大に伴い、ヘルスモニタリングによる複合材構造の健全性評価に対する重要性が増大しつつある。ヘルスモニタリングの手法としては、光ファイバーセンサ等の軽量で高機能なセンサーが有望であるが、コスト/重量などを鑑みると多少性能が落ちても複合材自体に損傷検出機能を持たせることにも多くの利点がある。このような観点から、炭素繊維複合材料(CFRP)を対象として、繊維破断や剥離損傷等によって電気抵抗が変化する現象を利用して損傷検出を試みる研究が国内外で積極的に行われている。しかしながら、CFRPでは繊維破断や剥離損傷等があっても、繊維問の接触によって導電性が保たれるため、損傷が相当に大きくならないと電気抵抗変化が十分な感度で検出されないという問題点が指摘されている。そこで本研究では、炭化ケイ素系セラミックス繊維の表面に絶縁被膜層を付与することによって、従来のCFRPに比較して飛躍的に高感度で損傷検出が可能な複合材料の創出を試みることを目的として研究を行った。本研究ではまず表面にナノスケールの絶縁被膜層を形成したセラミックス(SiC)繊維の単繊維強度分布を評価した。つぎに表面に絶縁皮膜層を形成したSiC繊維束を埋め込んだモデル試験片による評価を実施した。その結果、表面を電気的に絶縁したSiC繊維の適用により、低ひずみ領域においても高い感度で損傷を検出することが可能であることが示された。電気抵抗変化が繊維破断に一対一対応することを利用して、電気抵抗変化の定量的な解析を実施し、実験結果と解析結果が良く一致することを示した。また、表面を絶縁したSiC繊維を適用したFRPの試作と評価を行って、アルミ合金の補修パッチとしての適用可能性についても検討を行った。その結果、補修パッチとしてのき裂進展抑制効果が認められたものの、き裂進展のモニタリング精度は必ずしも十分でないことがわかった。これは、パッチ/アルミ合金問の接着剥がれによる影響であることが考察された。
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Composite Science and Technology 65(in press)
Composite Science and Technology 65 (in press)
日本複合材料学会誌 30巻1号
ページ: 33-40
Journal of Japan Society of Composite Materials 30,1