阪神・淡路大震災では、土木・建築鋼構造物の柱・梁部材に延性破壊または脆性破壊が生じた。この種の構造物の素材である鉄鋼材料は通常延性に富み、変形能に優れているが、地震荷重による大きな塑性歪みが部材に繰り返し作用したことにより、このような破壊を生じたものと考えられている。そこで、本研究では予歪みが鋼材の破壊強度にどのように関わっているのか、そのメカニズムの解明と予歪み材の簡易強度評価法開発の2つの検討を行っている。 延性破壊メカニズムの解明に当たっては、予歪みを受けた材料からの亀裂発生・成長挙動と結晶方位、粒界、結晶集合度の関係を実験的に究明することが不可欠であり、初年度である平成15年度は鋼材の平滑丸棒、円周切り欠き付き試験片を用いて予備的実験を行った。この際、破面観察におけるレーザー顕微鏡の精度向上が必要であり、これを目的とした高精度リニアスケールユニットを導入して検討を進めることにした。 一方、延性亀裂の発生を評価するには亀裂発生点における局所的な応力-歪み関係が必要となる。そのため、有限要素法により試験片の弾塑性解析を行い、切り欠き部の応力三軸度と相当塑性歪みを求めて結果を整理することにした。本年度は時間がなく解析例はわずかであるが、今後解析例を増やしていく方針である。解析と実験の両面から当初の目的にアプローチしていくための理論構築を行った。
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