非線形波力のうち2次波力や波漂流減衰力については、鉛直円柱の場合には従来の摂動法による研究により準解析解が得られるが、より高次の波力すなわち3次波力や波漂流付加質量の計算ではセキュラー項が表れ求解できないとされていた。そのため純数値的方法によるフルノンリニアーな計算が行われたとしても、その結果を検証するベンチマークデータがないのが実情であった。本研究ではセキュラー項が表れる高次の非線形波力問題について解析法を示すとともに、実験を行い高次の非線形波力問題の研究に資することを目的とした。 初年度には鉛直円柱について、潮流と波が共存する場での円柱周りの水面変位(エアーギャップ)の問題を取り上げ、解の唯一性の条件から新しい放射条件式を導出し、セキュラー解をMalenicaの用いたのと同様のマルチプルスケール法(Malenicaの解は円柱上の境界条件を満足しない)によりノンセキュラー化することに成功した。さらに潮流と波が共存する場での円柱周りの水面変位(エアーギャップ)の問題に、このノンセキュラー解を利用して円柱による散乱波問題の流れの影響の解析解を初めて導出し、Swanのグループの詳細な実験データと比較した。 2年度には、初年度の問題が水底まで届いた鉛直円柱であった問題を、浮遊円柱さらに任意形状の問題に拡張するため、内部問題には高次境界要素法、外部問題には固有関数展開法を適用したハイブリッド法を開発し定式化した。その時、Emmerhoff & Sclavounosに似た演算子法を見いだし解決した。3年度と最終年度は、任意形状について新に開発したハイブリッド法を適用し、楕円体と実用船型について解を求めた。さらに船型模型の微速操縦微係数の波漂流力、波漂流減衰力、波漂流付加質量の影響を波浪中PMM試験法を開発し計測に成功した。
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