本研究は、風、流れ、波が共存する水面におけるマイクロ波の散乱特性の解明とマイクロ波散乱計を用いた新たな海面計測手法の提案を目的に行われた。研究では、まず実験水槽において既知の風、流れ、波により人工水面を生成し、その水面に照射したマイクロ波の後方散乱を計測し、風、流れ、波がマイクロ波散乱に及ぼす影響を詳細に調べた。それから、波長の長い波が実在し、より複雑な形状の実海面におけるマイクロ波散乱を評価するため、表面電流法をベースにする変動水面でのマイクロ波散乱の数値シミュレーシヨン手法を開発し、数値シミュレーションによる海面でのマイクロ波散乱特性を調べた。その成果として、以下の水面におけるマイクロ波の後方散乱特性を得ることが出来た。 1)マイクロ波後方散乱に強さは風速のみに依存し、流れと波浪の影響はほとんど受けない。 2)後方散乱マイクロ波のドップラスペクトルの中心周波数は風速と流速に依存する。 3)後方散乱マイクロ波のドップラスペクトルのバンド幅は波の軌道速度(水面における水粒子の移動速度)に依存する。 これらの結果は、既存の研究成果の確認と共にドップラースペクトルと風、及び波浪との関係を明確にしたことで、その意義は大きい。また、これらの結果を踏まえ、マイクロ波散乱計を用いた新たな海面計測の道筋を明らかにした。
|