研究概要 |
本年度はキネマティックGPS(K-GPS)を用いて精密な位置計測を行う場合,衛星-計測点間の電離層および対流圏伝達路が異なるため,基準となる陸上レファレンス局から計測可能な移動局までの距離が制限される.そこで,リファレンス局からの距離制限のない一つの手法として,衛星から送信された信号周波数の位相変化量を計測し,移動体の3次元方向の速度成分を求め,速度成分を積分する速度積分法を用いて洋上でのブイの位置変動を計測し,K-GPSによる結果と比較検討を行った. 実験は2005年9月,鹿児島県志布志湾付近海域にGPSシステムを装備し2個のブイを配置し,またリファレンス局をブイ付近(500m程度)の陸上に設置した.これら2つのブイのGPSシステムと陸上リファレンス局によってK-GPS測位によるブイ位置変位量を計測し,さらに各衛星の搬送波ドップラーシフト量から速度積分法によりブイ位置変位量を計測した. K-GPSを用いて位置計測を行う場合,陸上のレファレンス局から計測可能な移動局までの距離制限があることから,GPSシステムを装備した2つのブイを実験海域に設置してブイの速度を計測し,それを積分することで位置をもとめる速度積分法とK-GPSによるブイ位置の垂直方向変位について比較検討を行い,その結果,速度積分法のポイント測位とK-GPSによるブイの垂直方向変位はその周波数特性(パワースペクトルおよび位相)において,約0.07Hz以上のパワースペクトルおよび位相は両手法ともほぼ同じ値を示し,また速度積分法のデファレンシャル測位の場合約0.1Hz付近以上の周波数成分が一致していることがわかった.異なる低周波数成分は速度積分法における積分誤差であること示した. そこで,次年度は低い周波数の波を速度積分法による単独測位によって計測できるべく,また速度積分法におけるブイの位置変位測定精度を向上させる必要がある.
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