研究概要 |
圧電材料PVDFは構造部材に接着すると、部材に生じた歪によって分極する。分極特性は圧電方程式によって決まることから、構造部材の歪測定を行うことができる。また、PVDFフィルムは焦電特性も示すので、焦電特性を用いた熱環境のモニタリングも可能である。本研究では、構造部材の表面の特定の直線に従った線上の応力分布を測定するテープ状センサーの開発を主に研究した。応力分布測定テープは、絶縁材料のテープ素材表面に、(5.0mmx2.5mm)の寸法のPVDFを、0度、45度、90度の角度で直列に並べて接着し、これをテープの長さ方向に繰り返して7組連続して接着したものである。圧電材料の特性によって、それぞれのPVDFは構造部材の歪に従って分極し、この分極状態を、非接触方式の表面電位計で測定する。 本研究の特徴は、上記応力分布測定テープの微小寸法のPVDFの表面電位を測定するために、画鋲形状電極を開発したことにもある。画鋲形状電極は、表面電位計のプローブ先端に取り付けて使用する全体形状が画鋲に似た形状の電極であって、金属製の画鋲電極の先端に導電ゴムの電極を取り付けたものである。この電極の導電ゴムの底面をPVDFに押付けると、PVDFの電位は静電誘導によって画鋲形状電極の頭部の金属円盤に伝達される。この金属円盤の電位をプローブで測定することにより、微小領域の電位測定を可能にするものである。表面電位測定法を用いると、電機配線を施すこと無く多点応力測定を行うことができる。 本研究で開発した応力分布測定方法は、切欠き試験片や亀裂試験片の応力分布測定に適用して、その性能を実験的に検証した。また、測定した応力成分σx,σy,τxyの精度は数値解析と比較して十分あることが明らかになった。
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