これまで、岩石の残留応力の測定として、粉末中性子回折装置を用いて、回折データの測定を行ってきている。本研究では、圧縮下で中性子回折実験を行うことで、応力下の回折データを測定し、これと残留応力のデータとを比較することによって、岩石が地中で受けていた応力を推定する方法を開発することを、研究の目的としている。 本年度も、高エネルギー加速器研究機構パルス中性子実験施設(KENS)の高分解能粉末中性子回折装置(Sirius)を用いて行われた、花崗岩および大理石の圧縮応力下での中性子回折実験の解析を進めた。花崗岩で回折ピークの位置が最も大きく変化している(110)反射では、その変化より求めた歪み値は、ポアソン比により軸方向に変換して1Nあたり1.7*10^<-4>%であり、応力に変換すると5.5Mpaという値が求められている。花崗岩の場合、種々の成分の混合している中の、石英の応力による変化の測定を行っているわけであるが、他の成分の寄与があることを考えると、単成分の岩石を用いて実験を行う必要があると考えられたため、大理石の試料を用いて中性子回折実験を行った。中性子回折データについては、測定がほぼ終了しており、大理石を用いた結果については、現在解析中である。また、試料の方向依存があるかどうかについて調べる必要があるとの議論から、試料を水平面内で1/8ずつ回転させて、回折データの測定を行っている。このデータについても現在解析が行われているところである。 これまでの成果については、8月にイタリアにて行われた国際結晶学連合第20回大会(IUCr2005)、11月にオーストラリアで行われた中性子散乱国際会議(ICNS2005)および9月に室蘭で開かれた資源・素材2005(室蘭)において報告を行っている。
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