研究概要 |
高レベル放射性核廃棄物の地層処分が検討され,そのもっとも可能性の高い岩種として,比較的大きな岩体として本邦に広く分布する花崗岩が対象として考えられている.花崗岩はマグマからの固結物質であり,このため岩体内部には冷却と上昇過程でさまざまなき裂が生じている.岩体のき裂のキャラクタリゼーションとして,露頭規模のき裂構造(巨視き裂)と顕微鏡レベルのき裂構造(微視き裂)との関係,およびき裂の方向性に関する知見を得る目的で検討を行った.その結果,急速な冷却・上昇過程を経験した岩体のき裂構造は,基本的には平行六面体であり,その結果,3方向の卓越方向があることがわかった.さらに,巨視き裂と石英内部の微視き裂の定方位性には強い相関があることがわかった.これらの結果から,花崗岩体の冷却き裂構造は,石英の微視き裂構造の発達がきわめて重要な要因であることを示している.さらに,この微視き裂構造の優劣(3方向のき裂の定方位性)を弾性波伝播速度の変化の程度から明らかにすることを試みた.き裂に直行する方向の弾性波伝播速度は,平行もしくは斜交する方向の伝播速度に比べて遅くなることが知られている.この性質を利用して,き裂構造の優劣を明らかにし,特に第四紀の花崗岩では,微視き裂構造,巨視き裂構造および弾性波伝播速度とによい相関を認めることができ,弾性波伝播速度からき裂構造の優劣を決定できることを見いだした.これらの結果を基に,より複雑な冷却・上昇史を経験した他地域の花崗岩体のき裂構造についての評価を試みる.
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