研究概要 |
1.野外調査に基づく花崗岩き裂のキャラクタリゼーション 中部領家花崗岩類の伊奈川花崗岩体に対して,フィールド調査による巨視き裂の観察を行いその走向・傾斜方向と,室内における弾性波速度測定結果との相関を検討した。その結果、巨視き裂が3方向に卓越する露頭試料においては弾性波速度の異方性と巨視き裂の方向に相関が認められた一方、せん断き裂が卓越する露頭試料においては,弾性波速度の異方性と巨視き裂方向とが一致しないことが明らかとなった。このことから、せん断き裂が卓越する場合,弾性波速度の異方性から巨視き裂構造を類推できない場合があることが分かった.定方位試料を用いた弾性波速度の異方性の評価に基づき巨視き裂構造を推定する場合,弾性波速度測定と合わせて広域的な断層の方向を加味することがより精度よいき裂構造の推定に必要であることを明らかにした。 2.き裂内間隙構造ならびに流体流路のキャラクタリゼーション 100MPa程度までの地殻応力条件において引張型花崗岩き裂における流体流動特性、ならびにき裂のかみ合わせ変位による流体流動特性の変化を明らかにするために、室内実験と流動シミュレーションとを組み合わせることにより、き裂内間隙構造と流動経路との関係を明らかにすることを試みた。その結果、引張型き裂の透水性は、垂直応力の増加とともに急激に減少し、40-50MPaより高い垂直応力においては透水性がほぼ一定となる一方、流動経路はき裂内のある特定部分だけが主要な流路として作用するチャネリングフローが生じ、高応力条件においてチャネリングフローが顕在化することが明らかとなった。本研究において、透水実験と流動シミュレーションとを組み合わせて、ある地殻応力にあるき裂において、マクロな流体流動特性である透水率だけではなく、ミクロな流体流動特性である流路構造を考慮したき裂流動特性の評価方法を提案した。
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