素材産業からの炭酸ガス排出抑制に寄与することを目的として、本課題では、年間1000万トン排出されるプラスチックを石炭代替材として、様々な金属精錬において行われている炭素還元に利用するための基礎研究を行った。本年度は、クロム鉱さいの還元処理に、廃プラスチックを脱塩素した炭素質の固形燃料を用い、クロムの還元特性について検討するとともに、油化およびガス化が困難なPETについて、還元剤および化学原料として有用な合成ガス(一酸化炭素、水素)へのガス化の検討、およびこれらのシステムを使った場合の炭酸ガス抑制効果について検討を行った。 実験では、脱塩素処理した混合廃プラスチックを粉砕したもの、クロム鉱さい、ケイ砂を混合したものを試料とした。この試料をアルミナ製ボートに入れ、種々の条件で加熱(還元)処理した後、環境庁告示第46号に従って、塩酸浸出による6価クロム溶出試験を行なった。また、NiOを触媒として消石灰とともにPETを熱分解することで合成ガス(一酸化炭素、水素)へのガス化率を求めた。さらに、これらの結果を基本に、現在石炭等化石資源を材料としている分野において、廃プラスチックを代替としたときの炭酸ガス抑制効果について評価した。 クロム鉱さいからの6価クロムの溶出試験をするために、廃プラスチックを脱塩素した炭素質の固形燃料とともにクロム鉱さいの還元処理を行なった。酸素雰囲気下では、1000℃とすると未処理の場合の1.6%以下に低減でできることがわかった。また、He雰囲気下、600〜1000℃において、約0.5%まで低減できることが明らかとなり、現在行なっているクロム鉱さいの処理においてオイルコークスの代替として脱塩素した混合廃プラスチックを利用できることが明らかとなった。また、PETを消石灰とともにNiOを触媒として熱分解することによって効果的に合成ガスに転換できることを明らかとし、また化石資源代替とすることにより各産業において3.1%から26.8%の炭酸ガスの排出抑制が可能であることを示した。
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