余剰汚泥の濾過ケークならびに下水処理場の脱水ケークを対象として、オートクレーブ処理、気泡析出処理、凍結融解処理を行い、細胞壁の破壊処理の効率を有機物の可溶化率により評価した。 含水率90%以上の脱水ケークを用いた場合、オートクレーブ処理による可溶化率は10〜14%であった。無機凝集剤を含む脱水ケークの場合、含水率52%程度のケークは可溶化率が約1%に低下した。余剰汚泥を沈降濃縮したスラリーを用いて凍結融解処理を行った場合、凍結温度-3〜-5℃の範囲で可溶化率にピークが見られた。しかし、含水率95%の濾過ケークを用いた場合には-5℃以上の温度ではケークの凍結を確認できず、可溶化率は凍結温度が下がるとともに増加した。凍結温度-20℃における可溶化率は、スラリーと濾過ケークで同程度であった。脱水ケークを対象とした場合の気泡析出処理による可溶化率は、スラリーを対象とした場合の約50%であった。可溶化率の値も0.3%程度とかなり低いことが分かった。これらの結果より、オートクレーブ、凍結融解、気泡析出いずれの方法もケーク含水率の低下に伴って可溶化率が低下した。すなわち、細胞内自由水の存在を前提とする細胞壁破壊処理は、脱水汚泥ケークには適さないと考えられる。脱水ケークを対象とする場合には、細胞壁により直接的に作用すると期待されるオゾン処理等を検討する必要がある。 可溶化処理とともに、二次代謝産物の生産を目的としたモデル微生物培養系を検討した。その結果、Bacillus thuringiensisによるバイオ殺虫剤の生産を取り上げることにした。この菌が生産するバイオ殺虫剤は、芋虫や毛虫に有効な従来のものとは異なり、土中のコガネムシ幼虫に有効である。すなわち、余剰汚泥を原料として施肥効果、害虫防除効果の高いコンポストを生産する上で有効なモデル培養系であると期待される。
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