余剰汚泥スラリーと脱水処理工程の異なる二種類の脱水ケークを対象として、気泡析出処理、凍結融解処理、オートクレープ処理、過酸化水素処理、オゾン酸化処理、超音波処理、マイクロ波加熱処理を行い、それぞれの処理による可溶化特性を検討した。可溶化の特性を、MLVSSあたりの可溶化有機物量で定義した可溶化率から評価した。また、機械的前処理方法については可溶化のエネルギー効率も合わせて評価した。 オートクレーブ処理、オゾン酸化処理、マイクロ波加熱処理では可溶化率が比較的高かった。これに対して、気泡析出処理の可溶化率は他の細胞破壊を目的とした前処理よりの値より小さかったが、エネルギー当たりの可溶化率は最も高くなった。 汚泥脱水ケークを基質としてBacillus thuringiensisの固体培養を行った。無機凝集剤による凝集脱水操作を行ったケークではB.thuringiensisの増殖が阻害された。この理由として、石灰の添加によるpH上昇が考えられた。一方、高分子凝集剤による凝集脱水操作を行ったケークでは増殖の阻害は認められなかった。脱水ケークを対象とした前処理方法として、凍結融解、マイクロ波加熱処理が効果的であることを、菌体胞子濃度より確認した。また、超音波処理、オゾン酸化処理では可溶化率は高いものの、菌体胞子濃度は低く、バイオ殺虫剤の生産には適して着ないことが明らかになった。この理由として、酸化的条件の強い前処理ではB.thuringiensisの増殖を阻害するような物質が生成したことが考えられる。 有機物の可溶化を目的とした細胞破壊処理を行うことにより、下水処理場から排出される脱水ケークをバイオ殺虫剤生産用固体培地として利用できることが示された。また、そのための細胞破壊処理としては、凍結融解、マイクロ波加熱処理が有効であることが分かった。
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