研究概要 |
日本では循環基本計画法のもとで,容器包装材,食品,建設,家電,自動車へと展開される各リサイクル法においてリサイクル率が設定され,重量・体積の指標から物質循環の枠組みが制定されてきた.しかし各生産主体においてはリサイクル率の達成が自己目的化し,その達成をめざして量的な部分に重点を置いた安価で低質のカスケード型リサイクルの取り組みが多い.そこで,持続可能な発展にはクローズドのループ(advanced loop closing)からなる高度循環システムを構築することが必要であり,リユースも含めた質の高いリカバリーを展開することが鍵となる.そのとき,市場価値の観点から資源生産性や環境効率性を指標としてとらえていくことが重要である.そこで,本研究では,自動車と家電製品の高度循環システムを提案し,資源生産性と環境効率性から評価することを目的とした. 自動車リサイクルにおけるASRのリサイクル,家電リサイクルにおけるプラスチックやウレタンなどのリサイクルとともに部品リユースを行うことが高度循環の鍵となる。その時に,鉄鋼業の高炉、家電リサイクル施設、化学処理施設など企業の既存の技術・インフラを活用して高いレベルでマテリアルリサイクルのシステムを計画している兵庫エコタウンにおいて,自動車・家電-鉄鋼産業の連携モデルを実現することを目標とした. 自動車を対象としたリサイクル高度化の検討では,鉄スクラップを高級鋼板にリサイクル可能な冷鉄源溶融炉を中心に,ELVの高度分別施設と廃タイヤのガス化施設を組み合わせて活用することによる効果をマテリアルフロー分析と資源生産性を指標として評価した.その結果,上記組み合わせでバージン資源投入を削減できるとともに,マテリアルリサイクルが促進されて高級鋼板や還元ガスなど市場価値の高い素材供給が可能となり,資源生産性においても相乗効果によって約2割向上する結果となった. 家電製品を対象としたユニット・部品のリユースの検討では,リユースとメンテナンスを組み合わせて製品の延命化を図ることによって,機器更新に比して資源投入量で約3割,最終処分量で約4割の削減が達成されることが分かった.そして,資源生産性で約6割,環境効率性で約4%向上する結果となった. 以上より,高度循環の取り組みによって資源生産性および環境効率性を向上できることが明らかとなった.
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