研究概要 |
近年、ダストの発生が核融合装置において注目されるようになってきた.核融合装置におけるダストの影響としては,トリチウムを吸蔵した炭素系ダストの飛散,水素を吸蔵した高温の炭素系ダストと水蒸気との反応による爆発などの安全上の問題,ダストの装置ギャップ間侵入による絶縁および気密性の劣化といった炉工学上の問題,さらに高温炉心プラズマ中でのダストの溶融,蒸発による多量の不純物発生とそれに伴うディスラプション発生の危険性が指摘されている.国際熱核融合実験炉計画(ITER)のダイバータ物理R&Dにおいても,ダストが重要課題の一つとして取り上げられている。本研究では、核融合装置において本質的な問題となってきているダストの形成機構を実験的に明らかにした。 直線型ダイバータ・プラズマ模擬試験装置を用いて,定常高密度水素・ヘリウムプラズマ照射によるプラズマ対向材(炭素,タングステン)からのダスト形成機構に関する研究成果が得られた。炭素材への水素プラズマ照射においては、炭素表面に20ミクロン程度のダストが生成された.このダスト形成には水素による化学スパッタリングと炭素系イオンに対するプラズマ流による摩擦力が重要な役割を果たしていることが明らかになった。さらにプラズマ中でのダスト輸送に関する解析を行い,核融合周辺プラズマのパラメーターでは,ダストの半径が1ミクロン以下の場合,重力などの力に比べてプラズマ流とダスト間のイオン摩擦力が極めて大きいことが明らかになった. タングステンに関しては、スパッタリング閾値以下のエネルギーの水素およびヘリウムイオン照射においてもブリスターやバブルが発生することが明らかになり、それに伴いフレーキングによるダスト発生が観測された。
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