研究概要 |
(1)黒鉛(IG430U東洋炭素製)に低エネルギー・高粒子束の重水素プラズマを照射し、黒鉛表面でのダスト生成に対する電子温度,照射量依存性について調べた。電子温度が5eV以上で,照射量が10^<25>m^<-2>以上のとき黒鉛表面に多数のダストが観測された.電子温度5eV以下の低電子温度条件下では,10^<25>m^<-2>以上の照射量においてもダストの生成は観測されなかった.高電子温度領域では,黒鉛表面から化学スパッタリングにより放出された炭化水素のプラズマ中での解離・電離が促進されるため,プラズマ流との摩擦力により,放出された炭化水素が黒鉛表面へ輸送・再付着するため,ダストが形成されると考えられる.また炭化水素(CD)の発光と重水素の発光(Dγ)との発光強度比が時間的に減衰していることが観測された.これは照射に伴い黒鉛表面構造が変化し、化学スパッタリング率が減少した可能性を示唆している. (2)次期核融合装置のプラズマ対向材料として有望視されているタングステンに低エネルギー・高粒子束の水素およびヘリウムプラズマを照射し,ダスト形成を調べた.粉末焼結タングステンに水素プラズマを照射した結果,ブリスターが形成され,その剥離によるダスト形成が見られた.また,表面温度が1600K以上でヘリウムプラズマを照射した結果,ヘリウムバブルとともに再結晶化により形成された粒界が表面から放出され,ダストが形成された.さらに現在大型核融合装置で用いられているタングステン被覆黒鉛材料に対してヘリウム照射実験を行った.ヘリウムプラズマを照射した後の試料表面では著しい黒色化が見られた.表面には球状のドームとダストが多数形成され,それぞれのドームには孔が観測された.これは,バルク材でも観測されるヘリウムバブルの成長に伴い形成されたと考えられる.しかし形成される表面温度が1250Kとバルクでのヘリウムバブル・ダスト形成温度(1600K)よりも低いことが分かった.
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