研究概要 |
本研究は深刻化しつつある宇宙放射線等による半導体素子のソフトエラーや損傷等の発生機構を解明するために,(1)数十MeVの核子に対するフラグメント生成断面積の測定法を開発し,(2)重要核種に対して系統的データを取得し,(3)理論モデルの精度を明らかにするとともに,SEUや線量評価への影響の検討を行った。 1.フラグメント測定法として,1)ブラッグカーブカウンター(BCC),2)エネルギー・TOF法(E-TOF法)を採用し,信号対雑音比,ダイナミックレンジ及び検出効率等の大幅向上を図り,低エネルギーフラグメントの測定を中性子入射の場合も含めて世界で初めて実現した。a)アノード・カソード間の時間差(粒子の飛程に対応)情報の利用によって弁別閾値を低下させ,かつb)BCCの有感領域を突き抜けたフラグメントのエネルギーを推定する方法を開発し,BCCによるスペクトルの測定範囲を2倍近くまで広げることに成功した。 中性子に対しては同心円状のセグメントアノード型BCCを開発し,粒子弁別性能を向上させバックグラウンドを低減することで実現できた。 E-TOF法の開発;BCCでは測定困難な低エネルギー粒子に対しては,マイクロチャンネルプレートと半導体検出器を用いたE-TOF装置を実用化した。 2.陽子・中性子に対するC,Al,Siのフラグメント生成データの取得 開発した装置を用い,70MeV陽子と65MeV中性子に対する測定を行った。フラグメントとしては,α粒子から酸素までのデータを得た。測定角度は,中性子に対しては0度,陽子に対しては30,60,90,135度の4点である。 3.測定結果の比較検討 得られた結果を,評価データ及び理論計算と比較検討した。計算値は全体にかなりの過小評価を示し,改良の余地の大きいことを示した。
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