リチウム二次電池は、軽量、高エネルギー密度、高電位等の優れた特長を有し、盛んに研究されている。高性能化、低コスト化、安全性等の課題でさらなる改良進歩を行うためには、正負極材料の開発が重要である。正負極材料においては、いずれもリチウムの挿入脱離における容量並びにサイクル特性の観点から、層状化合物が注目されている。負極材料には、層状グラファイト化合物が広く使用され、また正極材料として、層状V_2O_5ゲル、層状ブロンズ酸化物LiV_3O_8等が注目されている。しかしながら、これら層状化合物はいずれも配向性が非常に高いため十分なX線回折ピークを観測することができず、通常の方法では構造を精密に解析することが不可能となっている。そのため、最適の構造設計がなされているとは言い難い。本研究では、これらリチウム二次電池の正負極材料として大きなポテンシャルを持つ層状化合物の精密な構造解析を行い、リチウム挿入脱離における電気化学的特性との比較検討を通じて、最適の構造設計を行うことを目的とした。まず、負極材料としての層状グラファイト化合物について、電気化学的にリチウムを挿入脱離した試料を作成し、電気化学的特性の評価を行った。さらにX線回折測定を行い、配向方句のピークのみを使って1次元リートベルト解析を行い、積層構造を明らかにした。これらの結果を基に面内構造の推定を行い、リチウム挿入脱離における電気化学的特性を比較検討し、構造と電池特性に関する考察を行った。また、リチウム挿入時並びに脱離時の構造解析から、構造変化が可逆的に進行するのではなく、ヒステリシスが存在することを発見し、これが面内構造変化に起因することを、非配向方向の回折測定より明らかにするとともに、リチウムの挿入脱離における電気化学測定を行い、動的な挙動について考察を行った。
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