研究概要 |
メタンを主成分とする天然ガスの貯蔵や輸送にメタンが水の形成するカゴ状空間に閉じこめられた包接化合物,いわゆるメタンハイドレートをガス貯蔵などに利用しようとする試みが検討されてきている。その際にメタンハイドレートをより高温・低圧で安定化可能な添加剤を使用できれば,さらにメタンハイドレートをガス貯蔵などに利用するメリットが大きくなるものと考えられる。既に低分子量の有機化合物を用いた研究は,いくつかの報告例がある。 本研究では,メタンハイドレートを高温・低圧下で安定化するような高分子添加剤を探索することを目的として種々の高分子化合物について検討を行った。 実験は,架橋高分子微粒子を水-メタン共存系に添加して,メタンハイドレートの生成過程・分解過程に与える影響について検討を行った。さらにメタンハイドレート-水-メタン共存下における平衡温度-平衡圧曲線を測定し,微粒子添加により,この曲線のシフトの程度を検討した。 また,添加する架橋高分子微粒子表面に,不凍タンパク質類似ポリペプチドを修飾したものを使用した。これは,ペプチドの固相合成法を応用したものであり,今回作成した微粒子は,不凍タンパク質に多く見受けられるアミノ酸配列であるアラニンを多く含むものなどを合成して用いた。 これらの不凍タンパク質類似構造を有する架橋高分子微粒子を添加した系では,平衡曲線を大きく低圧・高温側にシフトさせるほどの添加効果はみられなかったが、生成するメタンハイドレート中に含まれるメタン含有量が増加する傾向がみられた。さらに,表面に修飾するペプチド鎖長などに依存して安定化効果に差が現れた。
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