研究概要 |
爬虫類は一般に鳥類と類似した核型をもち,カメ類やヘビ・トカゲ類では鳥類同様にマイクロ染色体が存在し,新蛇類に属するヘビ類ではZZ/ZW型の性染色体の分化がみられる.我々は、爬虫類の比較染色体地図を作製することによって爬虫類と鳥類間にみられるゲノム構造の類似住を明らかにすることを試みた.スッポンの脳と14日胚そしてシマヘビの脳からcDNAライブラリーを作製し,スッポン1532個とシマヘビ2097個のESTクローンを得た.そして、ホモロジー検索によってヒトのオーソログ遺伝子に相同なESTクローンを選択し、染色体上にマッピングすることによって,スッポンホモログ83個とシマヘビホモログ62個よりなる世界初の爬虫類の染色体地図を作製した.これらをニワトリの染色体地図と比較したところ,スッポンの1-5番染色体はそれぞれニワトリの1-5番染色体に対応し,両者間にきわめて高い染色体相同性が存在することが明らかとなった.シマヘビにおいてもニワトリとの間に多くの染色体相同領域の存在が確認されたが,ゲノム全体での相同性をみれば、ニワトリ-スッポン間よりニワトリ-シマヘビ間の方が染色体の保存性が低かった.さらに、ニワトリZ染色体はスッポンの6番染色体に対応し,カメ類は鳥類と分岐した後も約2億5千万年にわたり鳥類Z染色体の祖先型の染色体構造を保持してきたことが明らかとなった。一方、ヘビでは2番染色体がニワトリZ染色体に対応し、ヘビ類と鳥類の性染色体は起源が異なり独立に分化したことが判明した。これまでカメ類は無弓類に分類され,ヘビ・トカゲ類(鱗竜類)や烏類・ワニ類(主竜類)を含む双弓類とは別系統とされていたが,最近のミトコンドリアDNAや核遺伝子の塩基配列の解析から,カメ類はヘビ・トカゲ類よりも鳥類とワニ類に近縁であると推定されている.我々の研究結果は,この説を支持するものとなった.
|