研究概要 |
爬虫類のカメ類やヘビ・トカゲ類では鳥類と同様にマイクロ染色体が存在し,本研究で用いているスッポンとシマヘビではZZ/ZW型の性染色体の分化がみられる。一方、ワニは系統進化学的に最も鳥類に近縁であるにもかかわらず、マイクロ染色体をもたず性染色体の分化もみられない。そこで、今年度は、ワニとニワトリ間の染色体の相同性とマイクロ染色体染色体の消失の過程を明らかにする目的で、ヒト-シャムワニ-ニワトリ間の比較染色体地図の作製を試みた。まず、シャムワニの脳からcDNAライブラリーを作製し、4,948個のnon redundant cDNAクローンを単離して部分配列を決定した。次に、得られたESTクローンについてblastxを用いて相同性検索を行い、49個のヒトオーソログ遺伝子のワニホモログを同定した。そして、ダイレクトR-バンドFISH法を用いて45個の機能遺伝子をワニ染色体上にマッピングすることに成功した。45遺伝子中35遺伝子は5対の大型染色体に、残りの10個は10対の小型染色体上にマップされた。現在、これらの結果に基づいて詳細な比較染色体地図を作製中である。シャムワニ染色体地図を昨年度に本研究で作製されたスッポンとシマヘビの染色体地図と比較し、さらにそれらをヒトとニワトリの染色体地図と比較することによって、有羊膜類における核型進化の過程が明らかにできると予想される。 次に、鳥類の性染色体に対応するワニ染色体を同定する目的で、ニワトリZ連鎖遺伝子であるGHR、RPS6、ACO1、CHD1遺伝子をRT-PCR法を用いてシャムワニよりクローニングし、FISH法を用いて染色体マッピングを行った。その結果、全ての遺伝子はシャムワニの3番染色体短腕にマップされ、ニワトリZ染色体と高い相同性を有することが明らかとなった。
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