研究概要 |
鳥類と爬虫類間の核型進化、性染色体と微小染色体の起源などを明らかにする目的で、スッポン、シマヘビ、シャムワニのcDNAライブラリーを作製し、単離したcDNAクローンを用いて、それぞれ79,105,85の機能遺伝子よりなる染色体地図を作製した。その結果、鳥類と爬虫類の染色体とゲノム構造の進化過程に関して以下の知見が得られた。1)鳥類、ワニ類、カメ類を含む主竜形類の共通祖先は、鳥類とカメ類で共通に見られる核型をもつ、2)ワニの系統では、祖先型の1番染色体と2番染色体で動原体解離が生じた後、新たに動原体融合による染色体の再構成が行われた、そして3)祖先型の核型とシャムワニの核型の中間となる核型、つまりアクロセントリック型の染色体で構成される核型はカイマンで保存されている可能性が示唆された。さらに、現時点では主竜形類と鱗竜類の共通祖先の核型を推定することは困難だが、シマヘビが属する鱗竜類の系統では、主竜形類とは独立に高頻度の染色体構造変化が生じたことが推定された。鳥類と爬虫類の性染色体の起源を明らかにする目的で、ZW型性染色体をもつスッポン、シマヘビ、ミナミヤモリと性染色体が未同定のシャムワニから、ニワトリZ染色体連鎖遺伝子、ACO1,ATP5A1,CHD1,DMR1, GHR,RPS6の爬虫類ホモログをクローニングし、染色体マッピングを行った。全ての遺伝子はスッポン6番染色体長腕、シマヘビ2番染色体短腕、ミナミヤモリZ染色体長腕、シャムワニ3番染色体単腕にマップされ、遺伝連鎖群の高い保存性がみられた。スッポンとシマヘビでは常染色体がニワトリZ染色体に対応することから、カメ類とヘビ類の性決定様式は鳥類と異なることが示唆された。また、ニワトリとミナミヤモリのZ染色体の起源の一致は偶然である可能性が高く、両種の性決定遺伝子が同一であるか否かは不明である。このように、爬虫類と鳥類の性染色体の起源は多様であり、また性決定様式も多様性に富むことが明らかとなった。
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