研究課題/領域番号 |
15370006
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
工藤 岳 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助教授 (30221930)
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研究分担者 |
大原 雅 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 教授 (90194274)
石井 博 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 日本学術振興会特別研究員
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キーワード | 植物の繁殖成功 / 訪花昆虫 / 花序形態 / 花蜜分布 / マルハナバチ / 開花時期 / 花粉散布 / 結実率 |
研究概要 |
人工花序を用いた室内実験(1)では、同一規格の人工花を3種の花序形態(散形花序、円錐花序、総状花序)の花序内蜜分布を変えたセットでマルハナバチに訪花させて、花序の性質が訪花昆虫の訪花行動や送粉成功に及ぼす効果について評価した。花序サイズはマルハナバチの訪問頻度に影響を及ぼさなかったが、大きな花序では訪問あたりの連続訪花数が大きくなった。花序形態は訪花行動に何ら影響を及ぼさなかったが、蜜のない空花を混在させた花序では滞在時間と連続訪花数がともに減少し、送粉効率は向上すると予測された。すなわち、花序内花蜜分布は訪花昆虫の行動に影響を及ぼすことが検証された。 また、人工花序を用いた室内実験(2)では、display size(開花数)が訪花昆虫の植物選択に及ぼす影響を調べた。マルハナバチは、大きいdisplay sizeの花序を訪れたときほど、次にも同じ色の花序を選ぶ傾向が観察された。本研究は、display sizeの新たな意義<訪花昆虫の植物選択への影響>を提唱したものと言える。 野外調査では、高山環境に生育するキバナシャクナゲを用いて、花粉の散布様式と果実内の花粉親多様性を異なる生育地で比較した。開花時期の早い風衝地では主に越冬直後のマルハナバチ女王に訪花され、訪問頻度は低いが花粉散布距離は大きく、花粉親多様性は低かった。一方で、開花時期の遅い雪田ではマルハナバチのワーカーに訪花され、訪問頻度は高いが花粉散布距離は小さく、花粉親多様性は高かった。開花時期の違いが訪花昆虫の組成に影響し、送粉効率にも影響が及ぶことが実証された。 また、イチヤクソウ亜科の植物について訪花昆虫への報酬の違いについて野外調査を行った.イチヤクソウ亜科では訪花昆虫への報酬として、蜜を提供する種と花粉を提供する種が分化している。蜜を分泌する種において開花時期とマルハナバチの訪花頻度ならびに結実率との関係を調査した。エゾコマルハナバチの訪花頻度が最も高く、開花時期はこのマルハナバチの巣の解散時期と一致していた。巣の解散直前に出現する雄と新女王は花粉を必要としないため、蜜を分泌する花だけに訪花するためであることが示唆された。
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