研究課題/領域番号 |
15370008
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鷲谷 いづみ 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 教授 (40191738)
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研究分担者 |
西廣 淳 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 助手 (60334330)
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キーワード | サクラソウ / Primula nutans / 環境変動 / 馴化 / 微環境 / 地球温暖化 / 光合成 / クローン成長 |
研究概要 |
1.サクラソウを対象に、呼吸による物質消費特性の季節変化を明らかにするため、北海道の時節由来のラメットを、野外における温度・光環境の季節変化をシミュレートした環境下で約9ヶ月間生育させ、物質生産期(自然条件における春に相当)、落葉から低温を経験するまでの期間(夏から秋)、低温条件を経験した後(冬から早春)の3つの期間にわたり、地上部および地下部の呼吸速度とその温度依存性を測定した。その結果、呼吸速度は物質生産期に最も高く、落葉後には物質生産期の地下部の呼吸速度の1/5まで低下し、低温条件を経験した後に再び上昇するという顕著な季節変化が確認された。呼吸速度と光合成速度、およびバイオマス変化から全実験期間のラメット全体の炭素収支を推定したところ、光合成で生産した炭水化物のうち87%が呼吸により消費されていた。これらの結果から、洛陽語から低温を経験するまでの期間における呼吸速度の大幅な低下がラメットの年間の物質収支を正の値にすることに寄与していることが示された。 2.温暖化をはじめとする長期的な環境変化が生物多様性や生態系におよぼす影響を把握するためには、適切な指標種が必要である。温暖化の指標種として有力なサクラソウ属植物Primula nutansを対象に、生育環境である高山湿原の微地形環境の空間的・時間的不均一性を明らかにし、それに対する空間分布、成長、形態、生理的応答をチベット高原での野外調査および制御環境下での実験によって明らかにした。P.nutansは高い形態的可塑性と生理的馴化によって、微凹凸地形に基づく環境変動に応答できるが、相対的に明るいミクロサイトが好適で「安全性」の高いミクロサイトであることが明らかになった。また、明るく、日平均気温が10℃以下の冷涼なミクロサイトで良好な物質生産を示すことが判明した。
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