研究概要 |
原核生物と真核生物のゲノム情報を利用した比較ゲノム解析に基づいて,シアノバクテリアから色素体への進化を解明することを目標として,ゲノム装置成分の同定と機能解析を行い,以下の成果を得た。 1.真核・原核生物のゲノムにコードされる推定タンパク質配列をクラスター化するゲノム比較ソフトgclustのアルゴリズムを大幅に改良したバージョン3.5を作製し,大量データの高速処理が可能になった。 2.共生起源の機能未知植物遺伝子37群に含まれるシアノバクテリアの40個の遺伝子の破壊株の蛍光誘導測定を行い,大部分において,光化学系周辺に異常があることを確かめた。また,シロイヌナズナの対応する遺伝子について,GFP融合タンパク質の局在を調べた結果基本的に37群すべてが色素体局在であることがわかった。また,大多数が光誘導性であることも確認された。20群のT-DNAタグラインを解析し,少なくとも3群について,可視的な表現型を確認した。これらの結果は,計算によって抽出された37群のタンパク質が,確かに共生起源の葉緑体タンパク質であり,光合成に密接にかかわる新規の因子であることを示している。 3.原始紅藻のオルガネラ局在型DNAポリメラーゼとして2種類を同定した。 4.シアノバクテリア・紅藻・緑色植物の亜硫酸還元酵素について,DNA結合性と細胞内局在を調べた。どの酵素もDNAとの結合が見られたが,エンドウの酵素だけが特に長いC末端領域を持ち,これが核様体への強い結合に関与する可能性が示唆された。 5.色素体核様体を生きた植物体で特異的に可視化する手法を開発し,特に非光合成細胞における核様体の動態を明らかにした。また,色素体分裂の際に,核様体がネットワーク状になって分配されることを示した。
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