植物プログラム細胞死の誘導・実行の分子基盤

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15370018
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 福田 裕穂 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (10165293)
• キーワード: ヒャクニチソウ / ブラシノステロイド / プログラム細胞死 / 管状要素 / S1ヌクレアーゼ / リパーゼ / システインプロテアーゼ / プロモーター

研究概要

ヒャクニチソウ木部分化誘導系を用いて、ブラシノステロイドによる遺伝子発現誘導の解析を行った。その結果、ブラシノステロイドはホメオボックスHD-ZipクラスIIIの4種の遺伝子の発現を促進するとともに、複数の転写因子の発現を比較的短時間に促進することが明らかになった。また、細胞死特異的システインプロテアーゼ遺伝子ZCP4のプロモーター解析から、管状要素特異的発現を支配するcis領域が同定された。この領域は複数の細胞死特異的遺伝子のみならず二次細胞壁形成に関与する管状要素特異的遺伝子にも保存されており、細胞死と二次壁形成の協調の分子基盤の一つになっていると考えられた。
2.植物細胞死機構の多様性と一般性の解析
シロイヌナズナのS1ヌクレアーゼ全5種の遺伝子のプロモーター解析を行った。その結果、ヒャクニチソウZEN1のホモログのBFN1は、ZEN1同様未成熟な管状要素特異的に発現したが、他の4種は維管束特異的発現を示さなかった。この結果は、S1ヌクレアーゼの中でZEN1/BNF1が管状要素細胞死の中心的役割を果たしていることを強く示唆した。また、発生過程では、プログラム細胞死が予想される組織で様々なS1ヌクレアーゼ遺伝子が発現しており、各の細胞死過程で特徴的なS1ヌクレアーゼが働いている可能性が示唆された。一方、管状要素プログラム細胞死過程で発現する核局在リパーゼのプロモーター解析から、この遺伝子もまた複数のプログラム細胞死過程で発現することが示された。

研究成果

• [文献書誌] Ito-Ohashi, K., Fukuda, H.: "HD-Zip III homeobox genes that include a novel member, ZeHB-13 (Zinnia)/ATHB-15 (Arabidopsis), are involved in procambium and xylem cell differentiation"Plant Cell Physiol.. 44. 1350-1358 (2003)
• [文献書誌] Nakashima, J., Endo, S., Fukuda, H.: "Immunocytochemical localization of polygalacturonase during tracheary element differentiation in Zinnia elegans."Planta. (in press). (2004)
• [文献書誌] Nara-Sato, K., Demura, T., Fukuda, H.: "Expression of photosynthesis-related genes and their regulation by light during somatic embryogenesis in Daucus carota"Planta. (in press). (2004)
• [文献書誌] Minami, A., Fukuda, H.: "Trypsin-like endopeptidase activity is induced in the last stage of trachear element differentiation of Zinnia cells."Plant Biotech.. (in press). (2004)
• [文献書誌] Narita, N.N., Moore, S., Horiguchi, G., Kubo, M., Demura, T., Fukuda, H., Goodrich, J., Tsukaya, H.: "Over-expression of a novel small peptide ROTUNDIFOLIA4 decreases cell proliferation and alters leaf shape in Arabidopsis."Plant J.. (in press). (2004)
• [文献書誌] Obara.K., Fukuda, H.: "What Plant Cell Die (J.Gray ed.)"Sheffield Academic Press, UK. 287 (2003)